ストーリーインタビュー

お二人にとって「住まい」とは?

麓「 私にとっての住まいとは、『基地的な要素』が強いです。自分の基となるところだったり、生活の基盤の場所であるという意味を含んでいます。そういう場所は、人は飾ることなくありのままの自分でいることができますよね。だからこそ自分の思考や行動がありのまま、結果に出る、『住む人を映し出している鏡のような場所』、それが住まいなのではないかと私は思います。」

村松「私にとっての住まいとは、原初人間が洞窟に住んでいたように、『巣』だったり『隠れ家』のような、自分の身体を守り、環境/社会から隔離してくれる、『安息できる場所』だと思っています。


時代の変化によって、人々にとっての住まいはどう変化したと思いますか。特に昭和と平成の住まいのあり方の違いについてお二人が思うことや、これからの住まいのあり方はどう変わっていくと思いますか?

麓「昭和の頃は、核家族が多かったことから、「家」のなかで『個人の空間』が求められていたと思います。

それが平成になると、個人の空間もありながら、共有する場もきちんとある住まいが求められるようになっていったように感じます。特に最近は、人との交わりが稀薄になりつつあるという懸念からか、再び家族が集う場所が『住まい』でも重要視されていると思います。」

村松「そうですね、私も昭和から平成にかけて『個人の空間』から『”個人の空間”と”共有する空間”』がある形へと住まいが変化していったように感じます。

平成以降の住まいのあり方については、学生時代にすごく印象に残った出来事がありまして、東京出身の友達の実家に訪れたことがあるのですが、その彼の実家は家族4人で公団住宅内に複数戸賃貸し、基本は個人で生活、そして食事だけ一戸に集まる、というような暮らしをしていたんです。その時僕は、『建物は古いけれども、これは新しい住まいの在り方』だなと感じたことを今でも覚えています。

平成以降の住まいこそ、彼の実家が物語っていたように、これまでの一戸建てという括りは解体し、それぞれの家族に合った様々な『住まいのあり方』が増えていくのだと思っています。」

麓「そうですね。現代は、選択肢が多くなっている分、これまでの『住まいはこういうものだ』といったものが、どんどん無くなっていくと思いますね。選択肢にとらわれない多様性をかなえる住まいが当たり前になっていくと思います。平成以降の住まいが、これからどうなっていくのかとても楽しみです。」


今お二人はどんな家に住んでいますか、またこれからどういう家に住みたいですか?

麓「弊社でリノベーションした家に住んでいます。もともとの弊社の内装の特徴は『真っ白いキャンバスのような家、選択の幅が広がる家』なので、家のデザインに合わせるということはなく、自分に合わせて、好きなように住んでいます。

今後の住みたい家は『いい影響を与えてくれる家』に住みたいです。自分自身にとって家はとても重要な要素だと考えていて、家によって性格などその人自身が変わるとくらいのモノだと思っています。

家で気持ちがリセットできる空間があれば、毎日、気持ちがリセットできますよね。そういう空間がなければ、気持ちが切り替えられず、少なからず住み手の心に影響してくると思います。そういう意味で、自分に良い影響をもたらしてくれる家に住みたいですね。個人的には近未来的な新しい家より、古くても趣のある家に住んでみたいです。 」

村松「僕は千葉県富津市に古い一軒家を買って家族で住んでいます。
『自分で設計されたのですか?』とよく聞かれますが、全然、普通のやや新しい木造平屋の中古住宅です。やはり、僕にとって『住まい』の外殻はどうでもよくて、内部に住みながら家族で部屋を繋げたり区切ったりして快適な空間を作っています。

そういう意味では日本固有の『障子』『襖』といった間仕切りは都合がよく、今回の『ライフホリック』に通ずるものがあるのかも知れません。」


ライフホリックの家に自分ならどう住みますか?

村松「これはめちゃくちゃ悩みますね!」

麓「私も、正直想像できません(笑)一度住んでみて、その結果を見てみたいです。」

村松「強いて言えば、僕だったら可動棚を全部外して住むかな(笑)
実は、このプロジェクトを通じても言えるコンセプトなんですが、『伸びしろ』『余地』を残して、住む人が手を出したくなるような設計をしています。だからこそ、僕はその『不完全さ』をずっと残して、毎朝『うーん、やっぱり棚はこっちだったかな??』って悩みながら出勤したいですね。」

麓「まさにそうですね。そのときその瞬間の気持ちによっても、こうしたい!というものが変わると思うので気分によって間取りを変えたり、またリフレッシュしたいときに間取りを変えて気持ちを整えるということもしてみたいです。やはりそういう面でいうと住まいは自分を投影するもの、そのものだと思います。」


ライフホリックの家にはどんな人に住んでもらいたいと思いますか?

麓「どんな人に住んでもらいたいということより、私はいろんな人に住んでもらいたいと考えています。この家の最大の特徴は、間取りまで自由に選択できることですから、作り手としては100人100通りの住み方を実現することが楽しみです。」

村松「そうですね、間取りが自由に選択できるので、自由に動かして、並べて、魅せてもらいたいですね。もう一度愛着や自らの生活を投影したいと考える方に、生活を楽しんでもらいたいです。」

麓「この空間が、みなさんの自分を見つめる場に成ってもらいたいですし、自分を整える場にもなってもらいたいとも思っています。」

村松「雑多な都会で生活しているからこそ、『住まい』では自分の生活を見つめ直すきっかけになってくれると嬉しいですね。」

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